■TTB構造Nb酸化物単結晶の熱電特性 |
Ba3Nb5O15はtetragonal tungsten bronze (TTB)構造という結晶構造をとる。Nb1個あたり0.2個の4d電子が存在し,c軸方向がab面内よりも1桁程度電気抵抗の低い1次元的な金属伝導を示す。しかし,Baを同じ2価のSrで置換したBa3-xSrxNb5O15はx = 2付近で金属から絶縁体に転移する。さらにBaを2価のEuで置換したBa3-xEuxNb5O15においてもx = 2付近で金属-絶縁体転移が起こること,金属絶縁体転移近傍でNbの伝導電子とEu2+ (s=7/2)の局在スピン間の結合により電気抵抗が1/5000に低下するような巨大な負の磁気抵抗効果を示すことをこれまでに見出してきた。
これらの物質の熱電材料としての可能性を探るためにゼーベック係数を測定した。ゼーベック係数は常に負であり,母物質においては室温で絶対値が50 μK/W程度であり,100Kぐらいまでほぼ一定でその後0に近づく振る舞いを示す。またc軸方向とab面方向のゼーベック係数の異方性は,電気抵抗率の異方性(ρab/ρc ~ 10)と比較すると非常に小さい。一方,Euをドーピングすると,いったんゼーベック係数の絶対値が減少するが,さらにxを増やすと増加し,x = 2付近で母物質の値を超えて,x = 3 (Eu3Nb5O15)では150 μK/Wまで増大することが分かった。S 2/ρ(Sはゼーベック係数,ρは電気抵抗率)で表される電力因子は,母物質が最大であり,ドーピングによって(Sの減少あるいはρの増加により)減少することが明らかになった。
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