T. Katsufuji, T. Yoshida, K. Akimoto, S. Okubo, and T. Saiki
Pump-probe o
ptical spectroscopy of hexagonal YMnO3 over wide time and energy ranges”,
Phys. Rev. B 108, 125131 (2023).



YMnO3における様々な時間スケールにおけるポンププローブ分光測定の結果

勝藤研究室
Katsufuji Lab.       早稲田大学 先進理工学 物理学科width="100%"

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 ■広時間域ポンププローブ分光測定のYMnO3への適用
ポンププローブ分光測定は,1つ目のパルス光(ポンプ光)を物質に照射して電子を励起し,その後に2つ目のパルス光(プローブ光)を物質に照射してその応答を見ることにより,ポンプ光による物質の励起とその後の電子状態の時間変化をプローブ光によって追っていくことができる実験手法である。パルス光として100フェムト秒 ( = 10-13s)以下のパルス幅の光を用いることにより,パルス光照射後の電子励起の変化を追うことができる一方,1ナノ秒 ( = 10-9s)より長い時間スケールの変化は物質中の熱伝導によるものであり,サーモリフレクタンスとして知られている。このように時間領域ごとに特有の現象によるプローブ光の応答の時間変化が測定・議論されてきたが,単一の物質において,電子状態の変化から熱伝導まで一貫して測定・議論した例はこれまでになかった。
 我々は,六方晶YMnO3という物質において,1×10-13 ~ 5×10-9sという広い時間範囲とℏω = 1~ 3 eVという広いエネルギー範囲でポンププローブ反射率分光測定を行った。その結果,(1) 1 psより早く起こりすぐに消失する1.7 eV付近のMnのd-d遷移のピークのピーク幅の増加 (2) 数ps程度で起こるd-d遷移のピークの低エネルギー側へのシフト (3) 数10 ps程度の周期を持つ反射率の振動 (4) 1 ns以上で観測される反射率変化の減少,がそれぞれ観測された。(1)については,Mnのd-d遷移とMn-O間の電荷移動励起の結合によっておこる電子状態の変化,(2)については,格子の温度上昇に伴うd-d遷移の変化,(3)については,光の侵入長(< 100 nm)程度の部分の温度の急激な上昇に伴う弾性波の進行に由来する光の干渉,(4)については,格子の温度上昇の熱伝導による減少に,それぞれ対応することを見出した。これらの結果は,パルス光照射に伴う光誘起効果を,電子的なものから熱的なものまで一貫して測定・議論した初めての例である。さらにこの手法を用いることにより,固体の音速と熱伝導度をその異方性を含めて比較的簡便に測定できることを明らかにした。







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