勝藤研究室
Katsufuji Lab.       早稲田大学 先進理工学 物理学科width="100%"

トップページ  はじめに  研究内容  Member  卒論・修論・博士論文  Publication List 実験室紹介  学部生向け 研究室紹介動画 Link  
 ■Ti, Vモノキサイドの単結晶作製と物性
 NaCl構造をとるモノキサイドは酸化物としては最も単純な構造である。遷移金属モノキサイドの多くはモット絶縁体であるが,周期表の左側にあるTiやVの酸化物では金属に近い状態となる。これらのモノキサイドではTiOx,VOxのようにカチオンとアニオンの比xが1からずれることが可能であり,その物性はxに依存することが知られている。しかし TiOx,VOxは分解溶融であるためバルク単結晶はこれまでに作られたことがなく,多結晶と薄膜の報告があるのみであった。
 我々は原料にK2CO3を混合してフローティングゾーン法を行うことにより,TiOx,VOxの良質で巨大な単結晶を得ることに成功した。混合したK2CO3は溶融中にすべて蒸発して結晶中には残らないが,フラックスの働きをして本来は分解溶融である物質が均一に析出することに寄与すると考えられる。この方法を用いて,TiOx は0.9 ≤ x ≤ 1.2VOxは1.0 ≤ x ≤ 1.3の範囲で単結晶を作製した。作製した単結晶試料のキャラクタリゼーションと基礎的な物性を測定した結果,不定比xと格子定数の関係,電気抵抗率と磁化率の振る舞いは,単結晶と多結晶でほぼ同様であることが分かった。これらの単結晶試料を用いて光学反射率を測定し,光学伝導度スペクトルを求めた結果,TiOx,VOxともに,ドルーデスペクトル,モット励起スペクトル,ギャップ内励起スペクトルの3成分に分解できることが明らかになった。さらにいずれの場合も,xが増加するにつれて絶縁体的なスペクトルに近づく傾向があることが分かった。これらの結果は,TiOx,VOxにおいてクーロン相互作用が重要な役割を果たしているものの,カチオンの欠損が物性に重要な役割を果たしている「乱れたモット絶縁体」になっていることを意味している。






   図1 (上)VOx,TiOxの単結晶 (下)VOx,TiOxの光学反射率スペクトル


T. Yoshida, K. Akimoto, A. Yanagida, S. Yano, H. Matsumoto, T. Iwata,
R. Yoshimura, and T. Katsufuji
“Optical spectroscopy of bulk single crystals of VOx and TiOx”,
Phys. Rev. Mater. 7, 014412 (2023).


<<  研究内容に戻る

Copyright © Katsufujji Lab., All rights reserved