勝藤研究室
Katsufuji Lab.       早稲田大学 先進理工学 物理学科width="100%"

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 V1-xNbxOにおけるモット絶縁体-金属転移

VOは2価のV(3d 3)をもつNaCl構造のモット絶縁体である。実際の組成式はVxOyであり、x=yであっても欠損がある(すなわちx=y=1ではない)こと、その欠損はランダムに配置していることが知られている。一方、NbOはVOと同様の電子配置(4d 3)を持つ金属である。このNbOにおいては、NbもOも4つのうち1つが規則的に欠損することが知られている。
我々はV1-xNbxOの単結晶を作製し、モット絶縁体から金属への変化がどのように起こるかを、電気抵抗率、磁化率、光学反射率等の測定によって調べた。その結果、xが0.2より小さいところでは電気抵抗率ρの温度微分dρ/dTが負で磁化率がキュリーワイス常磁性となる典型的なモット絶縁体の振る舞いを示し、xが0.7より大きいところではdρ/dTが正となり磁化率が温度に依存しないパウリ常磁性となる、典型的な金属の振る舞いを示した。一方、0.3≤x≤0.6では、dρ/dTが正であるものの磁化率はキュリーワイス的な振る舞いを示す、モット絶縁体と金属の中間的な振る舞いを示す中間相であることを見出した。
 (V1-xNbxOy)δとして、各組成におけるx, y, δをTGA、ICP、および試料の密度測定によって求めた結果、VとOの欠損量であるδは、x=0ではδ=0.16であるが、NbをVで置換するとxが大きくなるにつれてδは大きくなって、x=0.5付近でδ=0.25になることが分かった。さらに、格子定数のx依存性は単純なベガード則に従わず、x<0.5ではあまり変化しないが、x≥0.5では大きく変化することを見出した。このことは、xが0.5より小さいところではxとともに欠損の数が増えるので、大きなイオン半径を持つNb置換による格子定数の増大をキャンセルしているが、xが大きいところでは欠損の数δが1/4に固定されるため、格子定数はxとともに増大していると考えられる。また、粉末x線の禁制ピークの現れ方から、x>0.2で欠損が秩序化し始めて、x=0.5を超えたところで欠損が完全に秩序化することが明らかになった。これは、x≥0.5で欠損の数δが0.25に収束することと一致している。これらの結果を踏まえて、0.3≤x≤0.6の中間相は、本来は金属相であるが、欠損が完全には秩序化していないために、乱れによって絶縁体的な特徴を併せ持った相になっていると考えられる。





図1 左:V1-xNbxOの電気抵抗率の温度依存性 右:V1-xNbxOの磁化率の温度依存性



R. Yoshimura, A. Yanagida, T. Iwata, S. Miyamoto, Y. Shimizu, and T. Katsufuji,
“Properties of mixed transition-metal monoxides V1−𝑥NbxO and V1−xTixO”,

Phys. Rev. Mater. 9, 034411 (2025).

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